腎機能への影響
「警告、禁忌を含む使用上の注意」等はドラッグインフォメーションをご参照ください。
本剤は海外臨床データに基づき承認されたため、審査で評価された海外臨床試験の結果を紹介します。そのため、一部、国内未承認の薬剤の成績が含まれています。
ドルテグラビルの腎機能への影響(SINGLE試験・安全性評価項目)(海外データ)
ドルテグラビル(DTG)+アバカビル/ラミブジン(ABC/3TC)群において、投与48週後、96週後及び144週後にクレアチニン(Cr)はベースライン時からそれぞれ10.2μmol/L、12.5μmol/L、12.2μmol/L上昇し、クレアチニンクリアランス(Ccr)はそれぞれ13.0mL/min、16.4mL/min、16.2mL/min低下しました。また、投与144週後のDTG+ABC/3TC群における尿アルブミン/クレアチニン比の変化量(中央値)は0.00mg/mmolでした。
ドルテグラビルの薬物トランスポーター阻害について
ドルテグラビル(DTG)投与による血清クレアチニン(Cr)の上昇とクレアチニンクリアランス(Ccr)の低下は、DTGがCr排泄にかかわる有機カチオントランスポーター2(OCT2)及びMultidrug And Toxin Extrusion 1(MATE1)を阻害するためと考えられています。
試験方法:
ヒトの尿細管上皮細胞の側底膜に発現する有機カチオントランスポーター(OCT1、OCT2、OCT3)および有機アニオントランスポーター(OAT1、OAT2、OAT3)、刷子縁膜に発現するMultidrug and Toxin Extrusion (MATE1、MATE2-K)およびOAT4、さらにOrganic Cation Transporter Novel(OCTN Type1、OCTN Type2)をコードしているシークエンスをトランスフェクトしたイヌ腎臓尿細管上皮細胞由来の細胞株(MDCKⅡ)を用いて、ドルテグラビルの各トランスポーターの阻害作用を検討した。
腎排泄は、薬物の体外への排泄経路として最も重要です。尿細管における薬物の分泌は能動輸送によるものが多く、薬物が血液中から尿中へ分泌される過程には、血中から尿細管細胞内への側底膜を介した取り込みと、尿細管細胞から尿中への刷子縁膜を介した排出(尿細管分泌)があり、それぞれの過程で特異的なトランスポーター(輸送担体)が関与しています1)。
薬物の尿細管分泌を担う薬物トランスポーターには、プラスに帯電した薬剤を認識するグループ(OCT:Organic Cation Transporter)とマイナスに帯電した薬剤を認識するグループの有機アニオントランスポーター(OAT:Organic Anion Transporter)に分けられます2)。また、尿細管分泌における主なトランスポーターには、血管側(側底膜)で薬物の取り込みを担うOCTs、OATs、尿細管管腔側(刷子縁膜)で薬剤の排出を担うP-糖タンパク質(P-gp:P-glycoprotein)、多剤耐性関連タンパク質(MRP:Multidrug Resistance Protein)、Multidrug And Toxin Extrusion 1(MATE1)などがあります2)。
MATE1は、主に尿細管上皮細胞の刷子縁膜側に発現し、逆向きのH+勾配を駆動力として、細胞内から尿細管管腔側へのカチオン性化合物の排泄を担っています3)~5)。薬剤トランスポーターの発現変動や機能変動は薬物動態に大きな影響を及ぼします。特に、同一輸送系によって排出される薬剤が共存するとトランスポーターの競合阻害が起こります。これにより薬剤の腎排泄が低下し、血中濃度が長時間維持され、副作用を引き起こすことがあります(排泄経路における相互作用)2)。ドルテグラビルは、SPRING-2試験6)及びSAILING試験7)等でクレアチニンクリアランスの低下が認められていますが、これはクレアチニン排泄にかかわるOCT2及びMATE1阻害によるものと考えられています。
TRMQ00103-D1902D 改訂年月2019年2月