SAILING試験
(第Ⅲ相臨床試験:海外データ)

「警告、禁忌を含む使用上の注意」等はドラッグインフォメーションをご参照ください。
本剤は海外臨床データに基づき承認されたため、審査で評価された海外臨床試験の結果を紹介します。そのため、一部、国内未承認の薬剤の成績が含まれています。
試験概要
【目的】
背景療法を併用した場合において、ラルテグラビル(RAL)を対照薬として、ドルテグラビル(DTG)の非劣性を検証する。
【対象】
抗HIV薬による治療経験があり、かつHIVインテグラーゼ阻害剤(INSTI)の投与経験のない成人HIV-1感染症患者719例(ベースライン時の血漿中HIV-1 RNA量>400copies/mL※1)
【方法】
多施設共同、無作為化、ダブルダミーによる二重盲検並行群間比較検証試験(非劣性試験)
対象患者を、DTG 50mg1日1回+背景療法※2を行うDTG群またはRAL 400mg1日2回+背景療法※2を行うRAL群の2群に無作為に割り付け、投与24週後及び48週後の有効性について、RAL群に対するDTG群の非劣性を検証(投与48週後)及び検討(非劣性マージン12%)するとともに、安全性についても評価した。有効性については、mITT-E集団※3及びper-protocol集団※4の両方で非劣性が示された場合、引き続き優越性解析を行った。
【評価項目】
有効性:
主要評価項目:
投与48週後における血漿中HIV-1 RNA量<50copies/mLを達成した患者の割合※5
ウイルス学的エンドポイント:
耐性変異の発現
安全性:
投与24週後/48週後における副作用発現率 など
【解析計画】
DTG群及びRAL群において、非劣性マージンを12%とし、投与24週後/48週後に血漿中HIV-1 RNA量<50copies/mLを達成した患者の割合の両群間の差における95%CIの下限が-12%より大きい場合、DTG群がRAL群に対して非劣性であると検証(投与48週後)及び検討した。さらに、mITT-E集団とper-protocol集団の両方で非劣性が示された場合、引き続き優越性解析を行うことがプロトコールで規定されていた。優越性については、95%CIの下限が事前に設定した基準である0%を上回っている場合に検証(投与48週後)及び検討した。なお、両群の奏効率は、Snapshotアルゴリズム解析によって算出し、両群間の奏効率の差は、Cochran-Mantel-Haenszel Weightを用いた層別解析に基づいて調整後、算出した。主要評価項目について、事前に規定されているサブグループの解析を行った。さらに、ウイルス学的無効(投与16週目までの血漿中HIV-1 RNA量減少が<1 log10 copies/mL(<400copies/mLの場合を除く)、または投与24週目以降に血漿中HIV-1 RNA量≧400copies/mLが検出された場合)及びウイルス学的リバウンド(血漿中HIV-1 RNA量<400copies/mLに至った後に血漿中HIV-1 RNA量≧400copies/mLに再上昇した場合、血漿中HIV-1 RNA量最低値が≧400copies/mLの時に、最低値よりも>1 log10 copies/mLの上昇が確認された場合)が認められた場合をウイルス学的治療失敗(PDVF※6)とプロトコールで規定し、PDVFに至った症例における投与48週後の耐性変異の発現を検討した。
【試験デザイン】
※1 スクリーニング時に血漿中HIV-1 RNA量≧1,000copies/mLの場合を除き、2回連続で血漿中HIV-1 RNA量>400copies/mL検出
※2 2剤までとし、少なくとも1剤は感受性のある薬剤を使用
※3 mITT-E集団:ITT-E集団からGCP(Good Clinical Practice)違反の1施設の4例を除外した集団
※4 per-protocol集団:mITT-E集団からプロトコール逸脱例を除外した集団
※5 mITT-E集団におけるFDA Snapshot アルゴリズム解析を実施
(層別解析にはCochran-Mantel-Haenszel Weightを用いた)
※6 PDVF(Protocol Defined Virologic Failure):プロトコールで規定されたウイルス学的治療失敗
ITT-E集団:無作為化され、1回以上治験薬を投与された集団
抗ウイルス効果:mITT-E集団〔投与48週後(主要評価項目)〕
投与48週後(主要評価項目)に血漿中HIV-1 RNA量<50copies/mLを達成した患者の割合は、mITT-E集団においてDTG群で71%であり、RAL群に対するDTG群の非劣性が検証されました[調整後の差※1:7.4% (95%CI:0.7, 14.2)]。また、per-protocol集団においても、DTG群で73%であり、RAL群に対するDTG群の非劣性が検証されました[調整後の差※1:7.5%(95%CI:0.6, 14.3)]。そこで、優越性解析を行ったところ、RAL群に対するDTG群の優越性[調整後の差※1:mITT-E集団7.4%(95%CI:0.7, 14.2)、per-protocol集団7.5%(95%CI:0.6, 14.3)、mITT-E集団P=0.030(両側検定)]が検証されました。
ウイルス学的治療アウトカム〔投与48週(主要評価項目)〕
投与48週におけるウイルス学的ノンレスポンスは、DTG群71例、RAL群100例であり、ウイルス学的データが得られなかった患者は、DTG群32例、RAL群31例でした。
ウイルス学的治療アウトカム(主要評価項目)

(FDA Snapshotアルゴリズム解析)
※1 ウイルス学的治療成功の定義:各エンドポイント時にHIV-1 RNA量<50copies/mLを達成した患者
※2 各エンドポイント以前に、その他の理由(同意の撤回、フォローアップ不可、転居、プロトコールからの逸脱等)で試験薬剤の投与を中止しており、最終来院時のHIV-1 RNA量<50copies/mL未達成であった患者
※3 各エンドポイント以前に認められた有害事象または死亡による試験中止のため、各エンドポイント時のウイルス学的データが欠損となった患者
※4 各エンドポイント以前に、その他の理由(同意の撤回、フォローアップ不可、転居、プロトコールからの逸脱等)で試験薬剤の投与を中止しており、最終来院時のHIV-1 RNA量<50copies/mLであった患者、または最終来院時のウイルス学的データが欠損となった患者
※5 試験薬剤の投与を継続しているが、各エンドポイント時のウイルス学的データが欠損となった患者
耐性変異の発現〔投与48週(ウイルス学的エンドポイント)〕
投与48週において、DTG群でINSTI耐性変異が認められた4例のうち1例はベースライン時にRALに対する主要な耐性変異が認められました(Q148H/G140S pathway)。残り3例のうち2例はR263KまたはR263R/K mixture、1例はV151V/Iの耐性変異が認められましたが、それらのFC†は2未満あるいは変化なしでした。
プロトコールで規定されたウイルス学的治療失敗(PDVF)時におけるINSTIに対する耐性変異発現例数(ウイルス学的エンドポイント)

INSTI:HIVインテグラーゼ阻害剤
† FC:Fold Change
※ PDVF(Protocol Defined Virologic Failure)の定義:
・ウイルス学的無効:投与16週までにHIV-1 RNA量減少が<1 log10 copies/mL(<400copies/mLの場合を除く)、または投与24週以降にHIV-1 RNA量≧400copies/mLが連続して検出された場合。
・ウイルス学的リバウンド:HIV-1 RNA量<400copies/mLに至った後にHIV-1 RNA量≧400copies/mLに再上昇した場合、HIV-1 RNA量最低値が≧400copies/mLの場合に、最低値よりも>1 log10 copies/mLの上昇が確認された場合。
安全性(海外データ)
本試験における投与48週後の副作用発現率は、DTG群20%(73/357例)、RAL群23%(85/362例)でした。なお、重篤な副作用がDTG群で2例(肝毒性、筋炎、急性腎不全各1件)、RAL群で4例(口腔粘膜水泡形成、膵炎、肝炎、自殺念慮、かゆみを伴う発疹各1件)に認められました。死亡例は、RAL群で3例[転移性腺がん、多臓器不全、子宮頸がん各1例(薬剤関連性なし)]に認められました。また、投与中止に至った副作用がDTG群で3例(トランスフェラーゼ増加、肝毒性、筋炎、急性腎不全各1件)、 RAL群で5例(悪心、口腔粘膜水泡形成、自殺念慮、膵炎、肝炎各1件)が認められました。
TRMQ00103-D1902D 改訂年月2019年2月