抗HIV治療ガイドライン

抗HIV治療ガイドライン第6章(2024年3月版)

Switch

ウイルス学的抑制が長期に安定して得られている患者での薬剤変更

要約

  • 薬剤変更の原則は、将来の治療の選択肢を狭めることなくウイルス抑制を維持しながらクオリティオブライフの向上をもたらすことである。薬剤変更による利益が不利益を上回る時に、薬剤変更が推奨される。
  • ウイルス学的抑制が長期に安定して得られている患者とは、変更前6ヵ月間以上においてウイルス学的抑制(血中HIV RNA量が50コピー/mL未満)が得られている患者である。
  • 変更の理由として、1日の服用回数や内服する錠剤数を減らすことによる利便性の向上、食事の条件の排除、毒性の軽減や副作用の回避、薬物相互作用の予防もしくは回避などがあげられる。持効性注射剤への変更については、利便性の向上や飲み忘れがないことに対する安心感に加え、毎日の服薬に関連するスティグマやプライバシーなども変更理由としてあげられる。
  • 変更前には、過去に投与した抗HIV薬の薬歴、血中HIV RNA量の推移や抗ウイルス効果の評価、過去のすべての薬剤耐性検査結果、過去の抗HIV薬の副作用などを十分に評価する(AⅠ)。特に、ウイルス学的治療失敗歴の有無と新たに処方を考えている抗HIV薬に対する耐性関連変異の有無について注意する。
  • 薬剤耐性変異の獲得がある症例や、ウイルス学的治療失敗歴があり薬剤耐性獲得の可能性がある症例を除外すると、初回抗HIV治療として推奨されている3剤もしくは2剤療法への変更については変更後のウイルス学的治療失敗の危険性は極めて少ない(AⅠ-Ⅲ)。持効性注射剤による治療(AⅠ)やその他の推奨される組み合わせに含まれていない2剤療法(BⅠ-CⅢ)への変更は、適切な症例を選択すれば治療変更の選択肢として十分考慮できる。

[令和5年度厚生労働行政推進調査事業費補助金エイズ対策政策研究事業
HIV感染症および血友病におけるチーム医療の構築と医療水準の向上を目指した研究班による「抗HIV治療ガイドライン(2024年3月版)」]

PM-JP-HVX-WCNT-230002 作成年月2024年5月