ATLAS試験

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ボカブリア水懸筋注およびリカムビス®水懸筋注は、海外臨床データに基づき承認されたため、審査で評価された海外臨床試験の結果を紹介します。

ATLAS試験(海外データ)

ウイルス学的抑制が得られている成人HIV-1感染症患者を対象とした非盲検比較検証試験(非劣性試験)

試験概要

【目  的】
抗レトロウイルス療法(ART)による治療経験のある成人HIV-1感染症患者において、経口ARTを48週以上継続した場合を対照に、経口ARTからカボテグラビル(CAB)注射剤+リルピビリン(RPV)注射剤の筋肉内投与(1ヵ月間隔)へ切り替えた場合の有効性の非劣性を検証するとともに、安全性、忍容性を検討する。

【対  象】
経口ART(2NRTI+INSTIまたはNNRTIまたはPI)により、6ヵ月以上のウイルス学的抑制が得られている成人(18歳以上)HIV-1感染症患者616例〔スクリーニング前12ヵ月以内に少なくとも2回の血漿中HIV-1 RNA量<50copies/mL(スクリーニング前6~12ヵ月で1回、及び6ヵ月以内で1回)かつスクリーニング時の血漿中HIV-1 RNA量<50copies/mL〕

【方  法】
多施設共同、無作為化、非盲検、並行群間比較、実薬対照、第Ⅲ相非劣性検証試験(非劣性試験)
本試験は、スクリーニング期、維持療法期(52週)、延長療法期、長期追跡調査期の4期で構成されている。
対象患者を1:1の割合で、経口ARTを継続投与する群(CAR群)とCAB注射剤+RPV注射剤を4週間隔で筋肉内投与する群(CAB+RPV群)の2群に無作為に割り付けた。CAR群では、2NRTI+INSTIまたはNNRTIまたはPIが投与された。ただし、ドルテグラビル・アバカビル・ラミブジン(DTG・ABC・3TC)の投与は除外され、アタザナビル(ATV)以外のPIにはブーストを併用した。CAB+RPV群では、CAB経口剤30mg+RPV経口剤25mgを4週間、1日1回食事とともに、または食直後に経口投与後、CAB注射剤(1回目600mg、2回目以降400mg)+RPV注射剤(1回目900mg、2回目以降600mg)を4週間隔で、52週まで筋肉内投与した。維持療法期(投与48週後)に血漿中HIV-1 RNA量<50copies/mLを達成したCAR群の患者は、CAB注射剤+RPV注射剤の筋肉内投与に切り替えて延長療法期に移行、または試験を終了した。CAB+RPV群は、投与を継続して延長療法期に移行した。延長療法期は、96週まで継続した。ただし、延長療法期に移行するかわりに、ATLAS-2M試験(CAB注射剤+RPV注射剤の4週間隔投与と8週間隔投与を比較)に参加する選択肢も与えられた。また、延長療法期に何らかの理由でCAB注射剤+RPV注射剤の投与を中止した場合、52週間の長期追跡調査期に移行し、経口ARTが実施された。

【評価項目】

有効性:

主要評価項目(検証的な解析):投与48週後に血漿中HIV-1 RNA量≧50copies/mLが確認された患者の割合※1

主要な副次評価項目:投与48週後に血漿中HIV-1 RNA量<50copies/mLを達成した患者の割合※1

その他の副次評価項目:投与48週後にウイルス学的治療失敗(CVF)※2に至った患者の割合、投与48週後のウイルス学的治療アウトカム、投与48週後の血漿中HIV-1 RNA量及びCD4陽性リンパ球数のベースラインからの変化量 など

ウイルス学的エンドポイント:投与48週後のウイルス学的治療失敗(CVF)時の耐性変異の発現 など

ヘルスケアアウトカムエンドポイント:投与24週後、44週後における治療満足度(HIVTSQs※3総スコア)への影響 など

探索的評価項目:治療法の選好性への影響 など

安全性:有害事象の発現率、重症度、臨床検査値異常、注射部位反応 など

【解析計画】
投与48週後における有効性(主要及び主要な副次評価項目)については、非劣性マージンを6%未満(主要評価)及び-10%(主要な副次評価)とし、CAR群に対するCAB+RPV群の非劣性を検証(主要評価)及び検討(主要な副次評価)した。有効性の主要評価項目は、ITT-E集団※4を用いて、FDA Snapshotアルゴリズム解析により算出した。同様に、主要な副次評価項目も、ITT-E集団を用いたFDA Snapshotアルゴリズム解析により評価した。また、主要評価項目及び主要な副次評価項目において、両群間の差の推定値は、層別Cochran-Mantel-Haenszel解析に基づく95%信頼区間により示され、95%信頼区間は、ベースライン時のキードラッグ〔INSTI、NNRTIまたはPI〕及び性別で調整された(無作為化の層別化因子※5)。なお、主要評価項目と主要な副次評価項目は、per-protocol集団※6においても評価した。 また、主要評価項目について、事前に規定されているサブグループ[性別(女性、男性)、キードラッグ(NNRTI、INSTI、PI)、年齢(<35、35~49、≧50)、人種(白人、白人以外、黒人/アフリカ系アメリカ人、黒人以外)、CD4陽性リンパ球数(<350、350~499、≧500)]によって評価し、サブグループにおける群間差の95%信頼区間の解析には、2 inverted片側検定を用いた。両群間におけるHIVTSQs総スコアを用いた治療満足度は、投与24週後、44週後のベースラインからの変化量を比較検討し、その解析にはANCOVA※7を用いた。治療法の選好性は、投与48週後にCAB+RPV群において、選択形式の質問により評価した。安全性の解析対象は、安全性解析対象集団※8とした。

※1 ITT-E集団、per-protocol集団におけるFDA Snapshotアルゴリズム解析を実施

※2 ウイルス学的治療失敗(CVF):血漿中HIV-1 RNA量<200copies/mLに抑制された後、血漿中HIV-1 RNA量≧200copies/mLが2回連続して検出された場合

※3 HIVTSQs:HIVにおける治療満足度質問票

※4 ITT-E集団:1回以上治験薬を投与された集団

※5 層別化因子:ベースライン時のキードラッグ(INSTI、NNRTI、PI)、性別

※6 per-protocol集団:ITT-E集団からプロトコール逸脱例を除外した集団

※7 共変量:治療薬、年齢、ベースライン時のキードラッグ(INSTI、NNRTI、PI)、性別、人種(白人、白人以外)、ベースライン時のスコア値

※8 安全性解析対象集団:無作為化後、1回以上治験薬を投与された集団

本邦で承認されたボカブリア水懸筋注およびリカムビス®水懸筋注の用法及び用量は、 1ヵ月間隔投与(CAB注射剤600mg及びRPV注射剤900mgを投与し、以降はそれぞれ400mg、600mgを1ヵ月に1回投与)および2ヵ月間隔投与(CAB注射剤600mg及びRPV注射剤900mgを投与し、初回投与後1ヵ月後にそれぞれ600mg、900mgを投与、以降はそれぞれ600mg、900mgを2ヵ月に1回投与)です。

引用文献

  1. Swindells, S., et al.:N Engl J Med 382(12), 1112-1123(2020)
    [本試験に関する費用は、ヴィーブヘルスケア(株)及びヤンセンファーマ(株)の支援を受けた。著者には、ヴィーブヘルスケア(株)及びヤンセンファーマ(株)の社員が含まれる。]
  2. 承認時評価資料:海外臨床試験(201585)

PM-JP-CBR-WCNT-220004 | 作成年月2023年12月